心と身体の養生ブログ~32.未病治について

32.未病治について

 東洋医学には「未病治」という概念があります。病気になる前に病気を治す。症状が出て、疾病として治療が必要になる前に、つまり疾病の診断基準になる前に、その疾病にならないように体調を戻すという感じでしょうか。糖尿病Diabetesを例に考えると「空腹時血糖は高めだけど正常範囲内、少々肥満傾向、直系親族にDiabetesの既往がある」ような人に対して、肥満傾向の改善、食生活を検討して改善、運動をはじめとする生活習慣について見直すなどにより、Diabetesにならないように軌道修正するということでしょうか。

 あるいはさらに積極的により健康な身体づくりを目指して、さらに健康になることでしょうか。私の大学院の時の講座は「健康増進・行動学」講座でしたので、まさにその道のプロと自慢したいところですが、当時はメンタルヘルスの研究をしていました(笑)。

 東洋医学では、さらに進んで病気にならない身体を作るという意味を含んでいるように思います。つまり未病治には健康増進のような意味も含みます。

 鍼灸の患者さんには、最初は腰痛とか肩こり、あるいは生理不順などの明らかな身体の症状があって、それを改善するために鍼灸に通いだしたけれど、通院するうちに体調がよくなっていき、症状が改善した後も健康維持のために通院を続けている方が多くいます。肩こりは、施術後には一時的に筋肉の緊張がゆるんで楽になりますが、生活しつづけていると日々の疲れはたまっていき、1~2週間もするとまた肩が凝った状態になってしまいます。それに対して、疲れがたまって肩こりに悩む前に、前回の施術からの溜まった「疲れ」をとり、健康な状態を維持しようという考え方です。

 人は加齢とともに、運動不足などにより筋肉が硬くなったり、心肺機能や消化器の働きが悪くなって、便秘がちになったり、足腰が痛くなったり、十分な睡眠がとれなくなったりします。そのような状態に対して、硬くなった筋肉をほぐし、便通や消化機能を整え、良い睡眠がとれるように自律神経を整えるなどという効果が期待できるため、鍼灸はまさに健康の維持・増進に資すると考えています。