心と身体の養生ブログ~1-30

24.日本人の死亡原因の推移について

 日本人の死亡原因については、医療系の国家試験には絶対に出る問題です。医療職の人の必須の知識です。公衆衛生学というのは、その時代をザクっと広く切って全体像をみるという面と、過去を振り返って歴史をまとめるような面があります。

 主な死因別に見た死亡率の年次推移からは、ザクっと以下のようなことが見えてきます。

  • 現在の死亡原因は悪性新生物(腫瘍)、心疾患、老衰が3大死因
  • 心疾患は平成6年に減じた(死亡診断書に「心不全」と記載するのを控えるように指導された)がその後上昇し続けている
  • 老衰は昭和22年をピークに減少していたが平成13年以降上昇に転じ、平成30年に脳血管疾患を抜いて3位となった。(主に人口の高齢化を反映)
  • 脳血管疾患は、1970年をピークに減少し続けている。(脳梗塞の治療が進んだことも要因)

 私の世代は長い間、日本人の3大死因というと「癌、脳卒中、心疾患」というものでした。もう少し先輩の世代の方にとっては、3大死因は「脳卒中、癌、心疾患」でした。それが1980年あたりに癌が脳卒中を追い越してしまい、どんどん上昇し続けています。癌は高齢になると増える疾患ですので、日本の高齢化をダイレクトに反映しています。脳卒中の減少には、「高血圧の治療をする人が増えた」ことと「脳梗塞の新薬の開発や治療法の進歩」があげられるでしょう。非常に有名な疫学研究の一つに久山町研究というのがあります。調査を始めた1960年代と1980年代では、高齢になると高血圧の人は同じように増えているのですが、昔に比べて今では、例え高血圧になったとしても投薬をうけて血圧のコントロールを行い治療を受けている人の割合が増えているのです。血圧のコントロールができているので脳卒中という転帰を得ないということです。

 この事例は何を教えてくれているのでしょうか。年を取るとあちらこちら不具合が出てくるのは仕方のないことです。心臓は生まれる前のお母さんの胎内にいた時からずっと絶え間なく動いて働いてくれていますし、血管もずっと血液を流し続けてくれています。年をとって柔らかかった血管も少々硬くなり、長く使っているので弾力性も少なくなり、もろくもなるのは当然のことです。だから血圧が上がっても、薬で血圧を下げてやって、血管の負担を軽くしてあげるとそれだけ脳卒中になる危険を下げることができるのです。それも大切な養生です。

 血管だけではなく、筋肉も骨も脳細胞もみんな老いていくのです。様々な手段を用いて、鍼灸でもヨガでも体操でも食事でも、なんでも身体が喜ぶようなことをして養生すればよいと思います。

引用

令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 gaikyouR4.pdf (mhlw.go.jp)