26.老年について(キケロー著)より
とりわけ哲学に造詣があるわけではないのですが、近年、両親を見送り、自らの老いや友人・知人の老いと向き合う中で、この本と出合いました。
作者のキケローは古代ローマの哲学者にして政治家で紀元前106-前43年に生きた方だそうです。そしてこの著作は、古代ローマの政治家・文人である大カトーなる人物が、文武に秀でた若者二人を自宅に招き、自らの到達した老いと死について語るというスタイルの対話集となっています。
先ず内容の紹介に移る前に感想から述べますと、ただただ一言、2000年以上前の紀元前の異国の人も、2020年を極東の日本で生きる私たちと同じ悩みを持っていたのだということに驚愕の気持ちを持ちました。人類はそれほど成長してこなかったのか。2000年間何も考えずに生きてきたのか。変化しないことは、人間だからなのだろうか。AIだとか、新たな時代とか言いつつ、結局、人が人であり続ける限り「老いと死」は永遠に悩み続けるテーマなのかもしれません。お釈迦様だって「生老病死」に悩んで、その苦しみから逃れる方法を探しておられた。私のような一凡庸な小人には答えが見つかるはずもなく、還暦を過ぎてなお日々悩みながら、老いと病と死について恐れながら、生きていくことの苦しさを思うのです。
キケロ―の作中で大カトーは「老年が惨めなものと思われる理由」を4つ挙げています。
- 老年は公の活動から遠ざけるから
- 老年は肉体を弱くするから
- 老年はほとんどすべての快楽を奪い去るから
- 老年は死から遠く離れていないから
これら4つの理由について、大カトーは「それは間違っているよ」と本編を通じて論破していくのです。次章から解説していきましょう