6.65歳以上の人の半数近くの人が何らかの不調を持っています
私たちは大変長生きができるけど、健康寿命がなかなか追いつかないのが現状です。しかし私たちの祖先は江戸時代、あるいはそれ以前から「養生」という概念で健康の維持・増進、疾病予防に努めてきました。
ところが、いくら健康に良い生活習慣を遵守して過ごしていたとしても、残念なことに老いは誰にも平等に訪れます。どんなに健康に気を付けていても、どんなに健康に良い生活習慣を遵守していたとしても、誰しもが加齢により様々な身体の不調を経験することになります。もちろん健康的な生活習慣を維持されてきた人の方がそうでない方よりも、長く健康に自立して生活できる割合が多いのは事実です。
下のグラフをご覧ください。これは令和元年(2019年)の人口千に対する「性別にみた有訴者率上位5位」を示したものです。男女ともに肩こり、腰痛、関節の痛み、だるさなどの身体の不調を訴える人が多いことを示しています。実はこれらの症状の緩和に鍼灸は大変有効であることが知られています。
腰痛では男女ともに10人に1人が、肩こりでは女性の10人中1人が、症状を訴えていることがわかります。例えば腰痛という症状は、単に姿勢が悪くて背中の筋肉が硬くなっている場合もありますが、腰椎椎間板ヘルニアや脊椎分離症、がんや骨粗鬆症、腰椎圧迫骨折など様々な原因によって、その結果腰の痛みという症状が出現していることが考えられます。運動不足や姿勢が悪いという場合も、うつ病で運動ができない場合もあれば、お仕事の作業環境に起因する場合もあるでしょう。単に腰痛一つをとってもその原因は様々なのですが、患者さんの症状としては「腰が痛い」という共通のものになります。鍼灸でこれらの原因となる疾患の治療はできません。根本的に治す、根治するためには手術などの外科的な治療が必要なものが多いといえます。しかし症状の緩和という目的であれば、湿布、飲み薬、温熱療法、神経ブロックと同様に鍼灸による痛みの緩和を試す価値は十分にあると考えます。
鍼灸では、筋肉を柔らかくしたり、血流を良くしたり、痛みを軽減したり、自律神経を整えたり、身体の免疫力を高めたりすることができるといわれています。肩こり、腰痛、関節痛、目の疲れ、不眠、便秘・下痢、頻尿、ストレスなどの様々な不定愁訴に対して、原因はともかく、症状を抑える効果があるのです。
最後にデータは少し古いのですが、平成25年の高齢者白書によると、65歳以上の高齢者の有訴率は466.1(対1000人)となっており、高齢者の半数近くです。高齢者では、薬に対する代謝が落ちており、多くの服薬をすでにしているため、服薬を減らすためにも、鍼灸を用いた鎮痛などの症状の緩和に期待できます。
この鍼灸の効用を使用して、より快適に元気な毎日を送ってくだされば嬉しいです。
参考文献
厚生労働省ホームページ 2019 国民生活基礎調査の概況
高齢白書(平成25年)https://empowerment.tsuda.ac.jp/detail/8181