38.子育てにまつわる神話:母乳神話
いつの時代も親は子の健やかな成長を祈り、丈夫で優しい子とか頭の良い子とかに育ってほしいと願うものです。
その昔、母乳が出ないときは、重湯や米のとぎ汁や動物の乳を飲ませたり、子育て中の近所のお母さんに「もらい乳」をしていた時代がありました。高度経済成長期に病院出産が増えてくると、出産直後に新生児室では粉ミルクを与え、母乳育児が減少していきます。また工業製品が時代の最先端でスマートであると考えられ、粉ミルクで育児をするお母さんが増えていきました。私の友人は「お母さんが味の素をミルクに混ぜると頭が良くなると信じていて、味の素入りのミルクを飲んでいた」といいます。ちょっとびっくりですね。味の素は大好きな調味料ですが。
1990年代になると、WHOの母乳推進の運動もあり、母乳育児がすすめられていきます。
確かに「母乳育児は、栄養面、健康面にも優れており、さらに母子の絆を深め、子の知能にも影響する」という研究結果もあります。しかし母乳でなくてはならない、母乳で育てるべきとまで言わないでほしい。母乳が出ないお母さんもいます。ストレスや体調や生活リズム等の原因で十分な母乳が出ない女性も多いのです。人工栄養でも十分に安全性や栄養が満たされています。母乳でもミルクでもどっちもええやん、と私は思います。母乳の便利なところは、お湯沸かしたり、冷やしたり、洗ったりしないで、いつでもどこでも授乳ができるので、特に夜間などは楽な点です。それくらいです。
母乳が出ないからと言って、「母親失格」とか「母性愛が足らない」とか悩まないでください。そんな体調の人もあるねん。とりあえず子供はお母さんが大好きで、元気に大きくなっていくので、なんの心配もありませんよ。