47.災害時の心理について②
さて災害や事故にあったときに人は「パニックにならない」というお話の続きです。
皆さんの記憶に新しい2001年9月11日にアメリカで起こったテロについて書きます。
この事件では、日本人24人を含む3062人(2001.2.25米当局発表)が死亡、25,000人以上が負傷したといわれています。飛行機の突入は1機目が8時46分、2機目が9時3分でした。1機目はワールドトレードセンター北棟の93-99階部分に、2機目は南棟の77-85階部分に突入しました。両ビルは炎上し、2時間足らずの間に崩壊したといわれています。 さてこのような時にビルの中にいた人たちはどのような行動をとって避難したのでしょうか。直後の人たちは先ず何が起こったのかわからなかったことでしょう。警備室に電話で問い合わせた人たちもいました。警備室の人たちも何が起こったのかわかりませんでした。連絡を待つように言われて待機した人も多かったようです。しかし時間がたつに従って、状況が容易でないことに感じ始めます。そして逃げて生き延びる選択をします。突入されたフロアーの上のフロアーの人たちは火災のためにビルから飛び降りる人たちもいたといいます。上層階では避難階段が破壊されており、人々が逃げ出すことは不可能でした。北棟では、1355人が閉じ込められて亡くなっています。下のフロアーの人たちも一度はエレベーターの前に集まって1階までの直通のエレベーターを待とうとするのですが、もちろんエレベーターは来るはずもありません。火災の時にはエレベーターではなく非常階段を使用して避難するよう言われていたことを思い出し、非常階段を使用して避難を始めました。階段では、押し合いへし合いというようなパニックは起こらず、みんな冷静に秩序正しく階段を下りて行ったといいます。下から上がってくる消防士のために片側を空けて、また身体の不自由な人をおぶったり介助したりしながら、声を掛け合い、勇気づけながら避難したといいます。下の階の人たちで死亡したのは、北棟で107名でした。南棟では、北棟への突入直後から多くの人が自主的に避難を開始していたために、亡くなった方は北棟の半分以下の630名でした。人は案外冷静に自らが生き残るための最適解を求めて、得て、行動していると思います。
人は事故や災害にあった時にパニックになりません。
被害を拡大するのは、パニックを恐れて正確な情報を出さないことです。そして被害を最小限にするのは、災害や事故の時のリーダーの存在です。
さらにリーダーを育成するための災害訓練、防災訓練などの地味な準備が大切です。
平成14年版外交青書
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2002/gaikou/html/honpen/chap01_02_01.html