三陽院通信

2024年8月 Let‘s 若見え 今回は「老いの徴候」

皆さま、こんにちは。

当メルマガを心待ちにしてくださる方も、そうでない方も、またまたお邪魔いたします。お忙しいとは存じますが、お時間がございましたら一瞥していただけますと、私は嬉しゅうございます。
とはいえ、お久しぶりになりました。サボっていたわけではないのですよ。単にぐうたらしていただけ(..)_。。。

暑いしねえ~~しかも今回はちょいと大作になってしまいました。老いの兆候と銘打っていますが、当初は、対策編まで書きたかったのですが、この身に余る腹回りの脂肪と老いの兆候よ!!トホホ・・・

というわけで、とりあえず、老いの兆候のみのお話をしようじゃないか!!!

今回は超長いので、以下に要点をまとめます。

本編で話題にした【老いの徴候】

白内障、加齢性黄斑症、緑内障、網膜剥離、糖尿病性の眼底出血
難聴
嗅覚障害
入れ歯、歯周病、口臭
禿、薄毛、白髪
姿勢老人性円背 O脚
お顔の皺について
シミ日光黒子(老人性色素斑)
脂漏性角化症(老人性イボ)
まぶたたるみ、眼瞼下垂症
ハンドベイン
血管血管年齢
腰痛椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離症・すべり症、筋・筋膜緊張性腰痛、腰椎圧迫骨折
変形性膝関節症
動作老見識活動能力判定、サルコペニア、フレイル
初老期うつ病、認知症初期
三大欲求食欲、睡眠欲、性欲

アンチエイジングは「抗加齢」

抗加齢医学会というのがあります。私は会員ではありませんが、抗加齢医学というのは究極の予防医学だと思います。老化を防ぎ、いくつになっても元気に若々しく元気に生きるための医学だと思っています。

「若く見える」「老けて見える」ってどういうことでしょう。
人間の身体も他の生物、非生物と同様に経年劣化します。この世の全てのものは生物・無生物にかかわらず経年劣化しますわ。愛車もそう!!最初は新車で喜んでブイブイ乗っていても、なんか10年も乗っていると、「あ~~疲れてきはったんやな。ごめんよ~~。いつもありがとうよ~~」なんて思っちゃいます。時の流れは残酷です。

世界三大美人で日本代表である平安時代の小野小町だって、加齢には勝てなかった。エイジングに立ち向かうのはとても無理だと知りつつも、現在生きている私たちは少しでも若く美しく元気でいたいと願っています。年齢を重ねると私たちの身体はどのように変化するのでしょうか。今回は、加齢によって生じる身体の様々な変化について書いていきます。もちろん、たくさんあるので書ききれていないと思います。また間違った認識の内容もあるかもしれません。どうかご容赦ください。

① 目

誰でも経験する「老眼」。40歳を過ぎたあたりで皆さん「あれ??」「ついに来たか!」と感じるはずです。手前の小さな文字が見えにくくなります。私はノギスを使っていた時に、眼鏡をはずして裸眼の方が楽なのに気が付いたときに、老眼の始まりを知りました。そして白内障、加齢性黄斑症、緑内障など、眼の病気には加齢と関連するものがたくさんあります。網膜剥離や糖尿病性の眼底出血など、命に係わらないかもしれないけど、人生のQOLに大いに係る重大な疾患が目白押しに襲ってきます。

② 耳

難聴ですわね。いわゆる「耳が遠くなった」というやつですよ。高音領域から聞こえにくくなるそうです。気になる方は、このURL(https://panasonic.jp/hochouki/download/dagehg/hearing2.html)で調べてみてください。パナソニックさんのHPです。モスキート音で調べるのですね。悔しいことに私は年齢相応です。でも「耳が遠い人は長生きする」とか言われませんか?これは因果関係が逆ですね。「耳が遠くなるまで」長生きしただけということだと思います。

耳が聞こえにくくなったら認知症が進むのでは?と不安になります。認知症になるまで、耳が聞こえなくなるまで長生きしているだけかもしれないけれど・・・

③ 鼻

男性は60歳台から、女性は70歳台から徐々に嗅覚障害の人が増えていき、80歳以上になると1割以上の人に嗅覚障害があるそうです。普段、あまり気にしないのでわかりにくいかもしれませんね。でも嗅覚がそこそこ鈍るおかげで「加齢臭」とか「オヤジ臭い」とか「口臭」なんていうのに、耐えられるのかもしれません。若い人からは「加齢臭」の爺さんなんて、めちゃ嫌われて迷惑なんでしょうが、年寄り同士はあまり気にせず付き合えるのかもしれません。

④ 口

歯ですよ。入れ歯ですよね~。8020運動なんていうのがあって、80歳で自分の歯を20本残しましょうという運動です。実際、自分の歯で食べている人は長生きしているように見えます。入れ歯になると食べてもおいしく感じなかったりするそうです。またいろんなものが、食べられなくなります。草加せんべいとか、固い肉とか。。。。食べる人は元気で長生きです。食べるためには歯が大切ということです。

とはいえ歯周病なんて嫌なものもありますよねえ。30歳以上の人の80%がかかっているそうです。細菌の感染によって生じる炎症性疾患なので、当然予防可能なんです。加齢は予防できない、避けられない必然だけど、感染やら炎症は予防したいものです。加齢によって歯肉が委縮して、歯と歯肉の間に食べかすなどが詰まって、そこに細菌が巣くって炎症を起こすらしい。なので、せっせと口内清掃に努めなくてはなりません。歯周病になると口臭もひどくなるというので、お口はきれいにしておきましょう。
また歯周病と心疾患の関連性もあるので、たかが「歯」と侮ることなかれです。できれば年に1度は歯医者さんに行って、お口を診てもらってください。

⑤ 髪

抜け初めてわかる、髪は長いお友達」ってフレーズを知ってますか?昔の育毛時のCMのキャッチコピーです。男性にとっては大問題。昔は「毛生え薬を発明したらノーベル賞、間違いない」と言われたほどです。TVに映る俳優さんたちに対して「○○は絶対に植えてる(=かつらだ)」と揶揄する人のいかに多いことでしょう。頭髪の薄い男性に対して、このような揶揄をしたり、マウントをとるのは同じ男性に多いように私は思います。女性の立場で言うと、禿はそんなにマイナスではありませんYO。「いや、禿は許せん、大嫌いだ」という女性がおられたらすいません。頭髪なんて関係なく、かっこいい男性はかっこいい。Bruce Willsさんなんて、めちゃかっこええやないですか!!と私は思います。

とはいえ、若い時に禿げてしまうと年齢よりも老けて見られてしまうというのは事実です。女子学生が3人寄ればダイエットの話をするように、近ごろの男子学生が3人寄れば、自分のオヤジはどうだ、爺さんはどうだと頭髪の話をしているのも事実です。

女性はというと、白髪と頭頂部から始まる薄毛という問題があります。きれいな真っ白な白髪は、それなりに魅力的で知的でハイセンスに見えます。しかし真っ白にきれいにするには、それなりに時間とお金がかかるうえに、白い頭髪をきれいに保つにはケアが必要です。私もいつかは白髪にしたいのですが、もう少し先にしようと思っています。

抜け毛や薄毛はなかなか対応できないのですが、髪艶にかんしてはお手入れの成果を期待できます。加齢によって艶がなくなってバサバサになると、山姥度アップになるので、ヘアケアのオイルなどで髪の毛を労わってあげるのは有効だと思います。

⑥ 姿勢

年を取ると「腰が曲がる」「背中が丸くなる」「O脚になる」人が多いです。筋肉の衰えなどから、高齢者の背中や腰の曲がりが進行した状態を「老人性円背」といいます。年をとると姿勢が悪くなる原因には筋力が低下し、関節が硬くなり、骨密度が低くなり、眼も悪くなって見えにくいうえに、身体のあちらこちらが痛くなって、それをかばって生活するからです。正しい姿勢を維持することが難しくなるのですね。

この姿勢が実はとても「見た目」に関係しています。娘が小さい時にバレエを習っていた先生は、60歳を過ぎておられたのですが、とても姿勢が良くてシュッとしておられました。後ろから立ち姿を見ると、20歳台の若い女性のように見えました。うらやましい~~

年をとると、なぜか肩甲骨の間辺りにお肉がついて、円背になってしまったり、変形性膝関節症のためにO脚になってしまったりします。

⑦ 皺

お顔には、たくさんのがあります。ほうれい線、目じりのカラスの足跡(笑い皺)、眉間の皺、額の横皺、口唇上の縦皺などなど、詳しくは図をご覧ください。

表情筋の働く際にできる皺を表情皺といって、目じりや眉間のものを言いますね。それぞれの皺の原因はいろいろあるでしょうが、眉間にいつも皺を寄せて怖い顔をしていると眉間に皺が刻まれます。いつも笑っていると、カラスの足跡がくっきりと表れます。どうせなら笑って過ごしたいので、笑うのをやめるのは愚策です。

その他、皺ができる原因としては、紫外線や急激な痩せなどもあるので、とりあえず紫外線対策はきちんとしておきましょう。そして乾燥予防も大事ですよね。

⑧ シミ

シミは女性の敵だわ。シミはお肌の皮膚の中で作られるメラニン色素が沈着したものなんだそうです。原因の筆頭は紫外線です。シミには、人生の長きにわたり紫外線を浴びたためにできる「日光黒子(老人性色素斑)」の他にも、そばかす肝斑なんていうのもあります。そばかすは小さいときからみられますし、遺伝とのかかわりの大きいです。肝斑は30~40歳台の女性にみられるものでホルモンバランスが関連しているといわれています。

今回のテーマのエイジングで話をすると、やはり老人性色素斑というシミですわね。「できてしまったら、もうどうしようもない」かというと、そうでもない。ものによっては、皮膚科・形成外科にいくと、レーザーで消すことができる場合もあります。今は保険もきいて簡単に消せるので、どうしても気になる場合は皮膚科で相談することも可能です。

⑨ 首のポツポツ

首のあたりにポツポツとできる黒子のようなイボを気にされている方はいませんか。
ちょっと調べてみたら、多く(80%)はスキンタッグ・軟性線維腫(アクロコルドン)と呼ばれるイボで、年齢に関係なくできるものだそうです。

老化と関連するのは脂漏性角化症(老人性イボ)というもので、10%くらいだそうです。他にはウイルス性のイボ(尋常性疣贅)というのもあるそうです(約2%)。スキンタッグや老人性イボというは、できやすい体質というのと刺激(ネックレスなどによる)が原因らしいです。

老人性イボは、お顔にもできて、一見シミのように見えるものもあるそうです。皮膚科でとってくれるので、気になる場合は皮膚科に行くとよいと思います。

⑩ 瞼のたるみ、眼の下のたるみ

目元の筋肉が弱くなったり、目元の皮膚がたるんでくると瞼が重く垂れてきます。瞼が全く開けておられなくて、黒目にかかって生活にも支障があるような状態になると眼瞼下垂症という立派な病気です。病院の形成外科を受診してくださいね。保険適用もあるようです。そこまでひどくならなくても、加齢によって眼輪筋が弱ってきて瞼を上げることがしんどくなると、若いころのぱっちり真ん丸お目めは、三角形になってくるのですよ。悲しい・・・・

また目の下のたるみも大問題です。目の下は下眼瞼といいます。そこに加齢とともに脂肪がたまって腫れて垂れたようになります。そこに摩擦や紫外線、血行不良によって、赤(紫)色や茶色や青色のクマも合わさると本当に悲惨です。美容外科とかで脂肪除去とかたるみの切除ができるようですが、保険適用外なのでとても高額です。

⑪ 手の血管・皺・シミ

手の血管が加齢によって収縮しにくくなって硬くなってくると、弾力を失い拡張して目立つそうです。さらには、手の甲の肌も、コラーゲンがなくなってハリがなくなるのです。手の甲の脂肪も減少するために、枯れてカサカサした感じになるのね。お腹の脂肪なんて、頼みもしないのに増えるし、溜まるし、減らないのに、少し手の甲に移植してやりたいものです。ハンドベインというそうです。知らんがな・・・・

また長年の紫外線によって、シミもできてきます。この手の血管を目立たなくする方法はあるのですが、美容整形になって、お金は下眼瞼の修復以上に高額となっています。トホホ…

⑫ 血管

私は血管こそが成人病の根本となる臓器だと思っています。つまりは血管年齢が老化の指標となると思うのです。糖尿病は最終的に腎臓や網膜の血管を傷めることによって、透析や失明という帰結になります。高血圧は血管壁に高い圧力負荷を加えることにより血管の破綻を起こして脳出血という帰結となります。加齢により生じる様々な生活習慣病は、血管にコレステロールが溜まったり、血管がもろくなったり、血管に弾力性がなくなったりと、血管という臓器が傷むことが根本的な問題だと思っています。なので、身体を元気な状態に保つには、血管を若く、柔軟で、弾力性に富んだ状態に保つことが必要なのだと思います。

血管年齢をいうのを測ることができます。ちょっとしたイベント的な要素もありますが、機会があれば一度測ってもらってください。そして、一喜一憂するのではなく、自分の老化の一つの指標として真摯に受け止めましょう。

⑬ 腰

年をとると腰も痛い。腰は若い人でも痛い人は多くいます。人間が二足歩行になったための必然という人もいます。運動不足でも痛くなるけど、運動しすぎでも痛くなります。椎間板ヘルニアとか脊柱管狭窄症とか脊椎分離症・すべり症とか、ちゃんとお医者さんでレントゲン撮って診察してもらってくださいね。で、診断されたら「痛み止め」の頓服薬と湿布を処方してもらい、それから・・・まぁ痛みを緩和するための様々な処置をうけるのかな。そしてどうしても痛みが引かないときに、根本治療というと、手術になるのかしら? 手術しても痛みやしびれが残ることもあって、悩ましいです。

そんなたいそうな脊椎の異常がなくても、姿勢が悪かったり、運動の過不足によって筋・筋膜緊張性の痛みがある人も多いです。それからぎっくり腰と言われる急性腰痛なんてものもありますが、これには上記の腰の疾患が隠れていてなんかの拍子に痛むこともあるそうです。

他には腰椎圧迫骨折による腰の痛みとかもあります。お年寄りに起こりやすい。孫と遊んでいて、ちょっと尻もちついたら圧迫骨折したなんて事例はぞろぞろです。私はスケートとスキーをあきらめましたよ。

原因は様々ですが、腰の痛いのは共通しています。そして加齢により患者さんが増えるのも共通です。そして鍼灸師だから言うわけではありませんが、腰の痛みに鍼灸は効きますぞ。これは「ほんとに、そう!」なので、整形外科を受診した後には迷わず鍼灸院へGOです。

⑭ 膝

腰の痛みに続いて、膝の痛みも加齢と関連します。変形性膝関節症といわれるものが多いです。膝を曲げると痛い、歩き始めが痛い、階段が辛い(特に降りるとき)、膝が腫れる、熱感がある、水が溜まる、膝が変形するなどの症状が現れます。加齢や激しい運動のせいで、膝の軟骨が減って、様々な症状がでます。変形性膝関節症が進行すると、O脚になってきます。

東洋医学では腰膝酸軟(ようしつさんなん)といって、腰や膝の症状は、加齢により腎臓が弱ってきているときのサインととらえます。東洋医学では高齢者は腎虚が多いとされています。

⑮ 動作

高齢になると動作は緩慢になります。反応は遅くなります。姿勢の保持が苦手になります。手足が震えたり、不随意運動がおこったりもします。加齢とともに増える運動系に特徴的な疾患というとパーキンソン病がありますね。近年、とても患者数が増えています。パーキンソン病については、別稿で詳しくお伝えしたいと思っています。

まずは皆様の活動能力について調べましょう。
以下の質問について、「はい=1点」「いいえ=0点」で計算してください。

老研式活動能力指標

手段的自立
バスや電車を使って一人で外出できますか
日用品の買い物ができますか
自分で食事の用意ができますか
請求書の支払いができますか
銀行貯金・郵便貯金の出し入れが自分でできますか
知的能動性
年金などの書類が書けますか
新聞を読んでいますか
本や雑誌を読んでいますか
健康についての記事や番組に関心がありますか
社会的役割
10友達の家を訪ねることがありますか
11家族や友だちの相談にのることがありますか
12病人を見舞うことがありますか
13若い人に自分から話しかけることがありますか

判定は上記のようになります。すなわち、65~69歳の人なら、だいたい12点が平均値なので、67歳の人で10点なら「ちょっと老いが進んでいるぞ、やばいやん」という感じです。逆に83歳の人が10点なら「平均以上にできてるやん、すごいやん!」って感じです。

高齢になると、運動量も減りますし、それとともに筋肉量も減ります。この筋肉量が減った状態をサルコペニアと言います。サルコペニアとは筋肉量が減少し、筋力が身体機能が低下している状態をいいます。転倒、骨折、さらには寝たきりなどの原因となるので、高齢になると食事や運動に気を付けて筋肉量が保つためにちょいとばかし努力してください。難しいこと考えるより、ご飯の時に卵1個足してみよう、お散歩がてら買い物に行ってみましょ、という程度でもいいので、頑張りましょう。

一方、フレイルという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。フレイルとは、病気ではないけれども、年齢とともに筋力や身体の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のことをいい、①体重減少、②疲労感、③歩行速度の低下、④筋力(握力)の低下、⑤活動量の減少などの症状があります。

この表から自己診断してみてください。私の方に「ダイエット!ダイエット!!」と年中宣言しているうちは大丈夫ということでしょうか?私の場合、まだまだ「体重減少幅」がありますね~~(自虐!)

LIFULL介護:https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/flail/ より掲載

⑯ 心

年をとりますと心にも変化があります。一般的に元々の性格傾向がより顕著になるといわれています。頑固な人はより頑固になり、意地悪な人はより意地悪になるとかね。まぁねぇ、年をとると新しいことは覚えられなくなります。昔のことはよく覚えているというのに!!新しいことを覚えようという気力すらなくなってきます。また人の名前とかなかなか出てきません。

高齢者の心理的なことを語るには「精神機能」と「認知機能」の両面から考える必要があります。
この短い尺で語るには、内容が膨大なので、次回に回したいと思います。

ただ「この頃、なんかおばあちゃんの様子がおかしい」なんてことがあります。片付けができなくなったり、身じまいがだらしなくなったり、怒りっぽくなったり、暴力的になったり、逆に泣いてばかりいたり、自傷行為になったり、家庭でいざこざが絶えないようなとき、家族内だけで何とかしようというのではなくて、専門家に相談してください。

高齢者の精神心理状態については、加齢による自然な変化もありますが、病気で専門家の治療が必要な場合もあります。特に初老期うつ病認知症初期は鑑別が難しいといわれています。どちらも専門的な治療が可能であると思います。

認知症についても、ここでは紙面が足らないので、別稿でお話ししたいと思います。

⑰ 三大欲求

人間は三大欲求として有名なのは、食欲、性欲、睡眠欲です。ただし集団欲と排泄欲が性欲や睡眠欲に代わる組み合わせもあります。

食欲は人間の生存のためには必須です。生命力と食欲は微妙に関連があると思います。老衰で亡くなるとき、だんだん食べ物を受け付けなくなります。昔は「食べられなくなったら数週間、(水を)飲めなくなったら数日」と言われ、最期の時のために親族を集めてお別れをしたと聞いたことがあります。

睡眠欲はどうでしょうか。年をとると睡眠に様々な変化やトラブルがあります。寝つきが悪い、睡眠が浅くなる、夜中に目が覚める、早朝に目が覚めてその後寝られない、日中眠くなるなどです。良い眠りを得たいというのは、高齢者の望みです。7~8時間、目覚めることなく、一気にガーっと眠りたい。高齢になると「睡眠薬」を処方されている人が多いです。自分で入眠剤を薬局で買い求める人も多いです。「良質な睡眠を得たい」というのは、高齢になっても、いや高齢になったからこその欲求なのかもしれません。

最後に性欲はどうでしょうか。「女性の性欲は灰になるまで」という大岡越前の母の逸話(AERA https://dot.asahi.com/articles/-/7290?page=1をご参照)でご存知の方もおられることでしょう。高齢者施設でも、入所の高齢者の方同士の恋のお話を聞くことがありますね。死ぬまで、人間は恋、というか心のつながりを求めているのではないでしょうか。

私は、「若い人達の性欲はいわゆる性器をもって満たす生殖行動であるのに対して、高齢者の性欲は心をもって満たす」というイメージで受け止めています。まあ、身体がいくことが効かなくなったから、若い人みたいに身体を使ってワッショイワッショイはできませんわな。

誰かを大切に思う気持ち、誰かを幸せにしたいという気持ちはとても尊いものです。まぁ、世のマダムたちは、夫さんたちではなく、ワンコやニャンコや小鳥さんなんかを愛情の対象にしておられるように思うのは私だけでしょうか?自分以外の人やものを大切に思う気持ちは、自分を幸せにしてくれます。

最後にマズローの欲求階層説をちょこっとご紹介します。これは人間の欲求には段階があって、下の階層から順番に満たそうとするというものです。添付の図を見てくださいね。高齢になった時、できれば欠乏欲求ではなく、最後まで成長欲求をもって生きたいと私は望んでいます。年をとることは、人生をあきらめることではないはずです。これまで積み重ねてきた経験と知識の上に、自分をさらに高めて、最後には自己実現した人として人生を締めくくりたいものです。

THEORIES https://theories.jp/terms-maslows-five-step-desire/ より

最後に、長々とお付き合いありがとうございました。
これでも書ききれないことがたくさんあります。是非ブログの方もご覧くださいね。