対象とする症状と疾患

13.腹痛

お腹の痛みの原因は様々です。消化器系(食道、胃、小腸、大腸)や泌尿器系(腎臓や膀胱)、生殖器(子宮や卵巣)、血管系、神経系、時には代謝系などの病気によっておこります。病態としても潰瘍によるもの、結石によるもの、腫瘍によるもの等があります。非常に急激で激烈な痛みがあるとき(結石)や吐血をともなうもの(潰瘍、腫瘍)、発熱・下痢・嘔吐・脱水をともなうもの(食中毒)などは至急病院を受診してください。それら以外の場合でも、腹痛の痛みを改善することは可能ですが、例えば胆石症の胆石が鍼灸でなくなることはないので、医師の診断は受けてください。鍼灸の対応可能な疾患は、慢性胃炎、胃下垂症、胃神経症、胆石症、慢性腸炎、過敏性大腸症候群、神経性腸疾患などです。この中で、過敏性大腸症候群に対する施術例は近年増えてきています。

【対象となる疾患】

  • 持続性の心窩部鈍痛、膨満感、重圧感、食欲不振など
  • 精神的ストレス、精神的・肉体的疲労が誘因となっている腹痛や消化器症状

【西洋医学からみた取穴(鍼灸師向け)】

*腹部:中脘、天枢
*背部:膈兪、肝兪、脾兪(胃の六つ灸)

【東洋医学からみた解説(鍼灸師向け)】

<上腹部痛>胃脘痛の原因分類:
①寒邪(実証:温中散寒
中脘、足三里、内関、梁丘、合谷
②食滞(実証:消食導滞
③肝鬱(実証:疎肝和胃
④脾胃虚寒(虚証:健脾温中
胃兪、中脘、足三里、内関、公孫

<下腹部痛>原因分類:
①寒邪(実証:温中散寒)
②食滞(実証:消食導滞)
③肝鬱(実証:疎肝理気
章門、太衝、内関、気海、陽陵泉
④脾陽虚(虚証:温補脾胃
脾兪、胃兪、章門、中脘、足三里