35.浮腫み
参照とした本(東洋医学臨床論<はりきゅう編>)には章立てがなかったのですが、臨床の場面で最もよくある症状の一つに「浮腫み」があります。そして浮腫みに、鍼灸はとても効果があります。
浮腫みには様々な原因が考えられます。全身性のものとしては、①心不全、心負荷、②腎不全、③低栄養、④薬剤性、⑤その他(肝不全、甲状腺機能低下、副腎皮質ホルモンの異常、関節リウマチ、アレルギー疾患など)があります。局所的な原因としては、①下肢静脈瘤、②深部静脈血栓症、③リンパ浮腫、④蜂窩織炎、⑤皮膚病変、⑥腫瘍、⑦筋肉血種、⑧体位(座りっぱなし、立ちっぱなしなど)があります。またストレス、過労、塩分の摂りすぎ、アルコールの摂りすぎ、冷え、女性ホルモンのバランスの崩れなども考えられます。
このようにきちんと疾患があって、その症状として浮腫みが現れることもありますが、臨床場面では、加齢により下肢の血液が心臓に戻りにくくなっているようなものが多いといえます。加齢が主とした原因で、全身の栄養状態の低下や、心臓、腎臓の機能の低下、血管の弾力性の低下や疎通性の低下、運動不足による血流の低下などにより、下腿がむくんでいる方が多く来院されます。全身的あるいは局所的な疾患がある場合は、医療機関への受診を促し、治療を受けていただくことが必要です。しかし、単なる加齢性のものや、医療機関での治療にプラスして症状の緩和を図りたいという方には、むくみの施術は非常に効果がありしかも即効性です。
癌のリンパ郭清手術後の手足のひどいむくみについては、鍼灸だけでどうにかなるものではないと考えます。医療機関における医師や理学療法士の方などとも連携を取ったうえで、鍼灸を試してもらうとよいでしょう。
浮腫みの際の取穴(あくまで三谷の個人的な取穴の主なものです。)
:三陰交、足三里、陽陵泉、陰陵泉、太谿、天枢、関元、水分など